音楽の力

昨日お目にかかった、ボサノバを歌われる方と、
こんな話をした。

人は穏やかに生きたいものなのだろうが、もし、
「情熱」がなくなったら、
音楽を演奏する人生は、成立するだろうか・・・と、
私はその方に伺った。

その方は、
「フラメンコのような、『怒り』を含む情熱を表現するのは
難しくなると思う」とおっしゃった。

そして、大富豪の息子として生まれ、何不自由なく
ボサノバの大家に育ってしまった作曲家を例にあげて、
「天国しか経験していない人が描き出す天国と、
天国に憧れた人が描き出す天国には、差があるでしょう」
とも。

自分はどこを目指していくのだろう。
自分の出来ることは何だろう。・・・と、しばし考えた。
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by cembalonko | 2007-12-19 22:20 | 音楽 | Comments(4)

Commented by k.n. in Kobe at 2007-12-20 00:42 x
一週間くらいぶりにこのblog によらせていただきました。
そのボサノバ歌手のおっしゃったことは頭ではわかるような気がします。
情熱というか、激情があるからこそ、
大文学、大音楽が生まれる、ということでしょか。
(話がずれますが、西洋語だと
情熱[passion]は、受難[the Passion] と言葉が重なりますね)

ただ、どんな芸術にも人の心を鎮める部分もあると思います。
英語で「作詩する」「作曲する」を意味する compose が、
「気持ちを落ち着かせる」 の意味になりうることは、
偶然でない、と思います(名詞で composure にするとはっきりします)
激情で始まったものが、落ち着きのうちに終わって、
という類の詩作品が好きな人間としては、
一本調子に激情を歌われても、という気もします。
もうすこしいえば、文学にせよ、音楽にせよ、
怒り、のみならず、
「至福直観」 と呼べそうなものも、
まれにではあれ、
表現できるのではないでしょうか。
一種の 「奇跡」 みたいなものですが。

Commented by ビケ♪ at 2007-12-21 09:16 x
書き込みありがとうございます!

その方の言いたかったことは、必ずしも「情熱」ばかりが
大音楽家を生む素地ではない、ということだと思います。
(ボサノバのお坊ちゃん作曲家の例)

へぇ~、composeとcomposure、語源が一緒なんですね!
作曲・作詞する人が、創作行為を通して得られる心の平安と、
それを受け取る側が、そこに表現されたことを通して受け取る何かとは、
同じではないかもしれませんね。

私の武術の師匠は、「禅画」という、墨で仏の姿などを描く画家でもあり、
こんなことをおっしゃっていました。
「絵を書く時に、自分の『気』(=心?)が整っていると、
『墨気』が整い(墨の粒子みたいなものらしいです)、
それが絵となって伝わる。しかし、見る側に、
それが判断できる程に高められた審美眼がある場合のみ、
それが伝わり、その人の気を整えることができる。」と。

芸術は、生まれてきた背景がどうであれ、受け取る側の
心に再現されるものが、「完成品」なのであって、
表現する側は、完璧と思っても、それはまだ未完成品なのです。
Commented by k.n. in Kobe at 2007-12-21 13:17 x
ご返答ありがとうございます。

結びの段落で仰っていることは
文学の世界での「読者論」とかぶってくるのだと、と思います。
(音楽の世界で「聴き手論」というのが存在するのかな、と
思います。多分、あるのだと信じます)。
読み手(聴き手)がいてこその文学(音楽)ではあるのでしょうが、
読み手(聴き手)の読み(聴き)も、おろらく完璧ではなく、
だからこそ、一定の枠の中なのでしょうけど、
複数の読み(聴き)が可能になるのかな、と思います。

文学の世界だと(でも?)、どちらかというと
「お坊ちゃま」的な作家、というのは、煙ったがれるし、
善人よりは悪人を、天国よりは地獄を、描いたものに
迫力がある、と語られるのですけれども、
「お坊ちゃま」というか、
恵まれた人がその恵みを語る瞬間に見せる
「育ちのよさ」 みたいなものも、
なかなかに素晴らしいと思います。
たぶんそういう瞬間に
書き手と読み手の間で、
名指せないけどなにか「整った」ものが
交換されるように思います。
Commented by ビケ♪ at 2007-12-22 07:45 x
悪人の自分と、善人の自分がいますよね。
そのどちらに「響かせたい」のかによって、
読むものや、聴くものを選んでいくのかもしれませんね。
>善人よりは悪人を、天国よりは地獄を、描いたものに
>迫力がある、と語られるのですけれども
ということは、
やっぱり悪人が勝っているものなんですねぇ。人間って。

私も、育ちのよさがにじみ出た演奏、作品は好きです。
まあ、クラシック音楽自体が、他のジャンルから比べれば、
恵まれた環境で育まれたものかも・・・
(あ、この「恵まれた」という表現にもまた幅があるのですが・・・)