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カテゴリ:知的好奇心( 30 )

『ベートーヴェン捏造』を読んで

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ベートーヴェン捏造、やっと完読しました。
(いまごろ・・・でごめんなさい!)

この作品には、ベートーヴェンに憧れ、秘書を3年弱務めたにもかかわらず
彼に厭われて失望し、あげくのはてにベートーヴェンの死後
その生涯を「改竄」するという犯罪行為に手を染めた、
アントン・フェリックス・シンドラーという男の生涯が描かれています。

耳の聞こえなくなったベートーヴェンが筆談のために使っていたノートは、
のちにシンドラーによって『会話帳』という名前を与えられることになります。
そこには、ベートーヴェン自身の言葉はほとんど書き込まれていません。
なぜなら、彼は耳は聞こえなかったが、話すことはできたからです。
結果『会話帳』にはベートーヴェンと話した「相手」の筆跡のみが残ることになります。
後世の人々は、ベートーヴェン自身の言葉をそこから想像するしかない。
それをいいことに、シンドラーはそこに、
実際にはなかった「会話」を捏造し、それを想像させる書き込みをしてしまう・・・

これは、犯罪行為です。
後世の人たちはそれによって、
真実を知ることを妨げられるだけでなく、
虚偽を信じ込ませられるからです。絶対に許せない行為。

こんな悪事を働いた人物が、どのように描かれているのか。

私はこの本を読んで、シンドラーを糾弾する気持ちにはなれませんでした。
彼と彼の周りで起こる出来事に引き込まれていくうちに、思わず同情してしまう、
そんな心持ち。
なぜなら、著者はシンドラーを、
私たち誰もが陥らないとは限らない感情の持ち主として描いているからです。

並外れて強い「憧れ」と、それが届かなかった「失望」。
自分が得られなかった信頼や友情や愛をかち得た
他者に対するゆがんだ感情。
自分にとっての「ヒーロー」の神々しい姿が、
事実が暴かれることによって、傷つくことへの恐れ・・・

ベートーヴェンの死後、彼の伝記の出版をめぐり、
近しかった者同士の競争になる場面があります。
そこでもし、著者がシンドラーを
自分の手柄や賞賛のために
『会話帳』の改竄行為におよんだ者として描き出したなら、
シンドラーを心底悪者にできたと思います。
しかし、実際はそうではなくて、
大好きな師に嫌われた哀れな弟子兼秘書が、
それでも憧れの人を、後世の人の誹謗中傷から「守る」ため
何も疑いを持たず罪に手を染めてしまった。
そうした悲哀に、私は共感してしまいました。

かげはらさんの文章は、修士論文がもとになっているというだけあり、
史実を吟味し、現在までのベートーヴェン受容の状況を事細かに調べられ、
史料として読みごたえのあると同時に、
物語としてのエンタメ性が抜群に光っている作品でした。

少しばかり文章を書いた経験がある者としては、
こんな風に書けたら、楽しいだろうな~♪
と、うらやましく思いました。

PS 本筋とはあまり関係のないところですが、
個人的に面白かったのは、
当時の社会的状況が散見されるところです。
例えば・・・

☆フランツ・リストが、ボンのベートーヴェン記念像の除幕式の時に
失言して大炎上する場面(19世紀のナショナリズムの状況が分かる)

☆ベートーヴェンの甥カールが自殺未遂をして
司教の監視下に置かれる場面
(19世紀になってもなお教会制度に縛られていた状況が分かる) など。

ほぼ2日で読み切ってしまいました♪
スピード感があって面白かったです♪




by cembalonko | 2019-06-15 14:55 | 知的好奇心 | Comments(0)

中世の宴に迷い込んで。

演奏も講座も、今年は少し落ち着いたので
(あー!原稿の締め切りがまだひとつあったー!ってのは忘れて…)
今週末はいろんなイベントに参加してみてます。

今日はコストマリー事務局主催
「一葉の旋律、ある冬至の物語~中世欧州とその音楽~」に
お邪魔してきました。

カルミナ・ブラーナ(オルフのじゃなくてホンモノの方)や
聖母マリアのカンティガ集などの中世の歌と器楽曲を、
蝋燭の光だけの中で聴く・・・というイベントでした。

ドアを開けて薄暗い会場に入ったとたんに漂ってくる、
ハーブの香り(多分ローズマリー?)。異界の入り口感満載でワクワク。
そして暗い中、階段を下りていくと、あ、なんか踏んだ!(゚Д゚;)ギョ!
踏んだのはハーブの葉っぱ。床のそこかしこに撒いてあり、
昔はそれを踏んで良い香りを漂わせていたのだとか!
香りのもとはこれだったんですね~

Sally Lunnさんと近藤治夫さんによる、
中世の物語歌を中心とした演奏。
ハーディーガーディー、バグパイプ、
プサルテリウム、ハープ、笛といった楽器と歌の演奏が、
語り部の白沢達夫さんのやさしいお声の解説とともに流れると、
もうそこは、中世のある冬の夜に・・・
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蜜蝋燭の光 蜜蝋燭は当時高級品で、庶民は獣脂による灯りを使用していたそう

休憩時間には、歌詞の中に出てくるものと関連した
中世のお料理がふるまわれました。
(兎の丸焼きを一人で平らげてしまったダメ男の話とか、
女中が隠したTボーンステーキが聖母の奇跡によって
引き出しから飛び出してくる話とか・・・
なんじゃそりゃ!なんだけどあるのよ、そういう歌が!)
・兎肉の串焼き+中世アラブのソース(ラベンダー入り)
・ラム肉Tボーンステーキ
・ミンスパイ(中世の甘い豚ひき肉のパイと現代イギリスのレシピのもの) etc...
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兎の串焼きとミンスパイ 左半分が中世風、右半分が現代イギリスだそうです

私はミンスパイにとっても惹かれていたのですが、
展示してあるレアなCDをあさっている間に、
中世の方のミンスパイ、食べ損ねました~(´;ω;`)ウゥゥ
でもいいんです!大事な資料たくさんゲットできたし!出費しちゃったしー!(笑)

参加して本当に楽しかったです。
私がやりたいと思っていることの「理想形」だと思いました。
今年、音楽と風景と食のイベントを何度もやってきたのは、
ある時・ある場所にタイムスリップできる空間を提供したかったからなんですね。
当時の香り、味、空間、音、そんなものをひっくるめて再現出来たらなぁ、
というのが、夢なのです。

今回のイベントは、その要素がみんなそこにあった。
まず香り、そして暗がりに蝋燭のみという空間。
そうだ、食べる前に「手洗いの儀式」っていうのもやりました。
中世は手づかみで食べていたので、手を清めることは必ずやっていたとのことで。
そして当時の音楽を、中世のヨーロッパの言葉で聴く。
現代から遠い時代の方が、イマジネーションがかきたてられるものなのかも。
本当に素敵でした☆彡 来年はどなたか一緒に行きましょう!



by cembalonko | 2018-12-15 22:27 | 知的好奇心 | Comments(0)

狂言講座第二回に参加してきました!

旅行会社 i-Travel主催の狂言講座第二回に参加してきました。
講師は十世三宅藤九郎先生。
この日は(8月19日)舞台の造りや、実際に狂言の演目を見るにあたっての
鑑賞ポイントを中心に解説を伺いました。
お稽古体験では、おめでたい謡(うたい)をほんの少し実演。
あれ〜?先生の声と音程が合わない…なぜだ〜?!
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初めになんと!十世三宅藤九郎先生と和泉元彌さんとの撮影タイムあり📷緊張~💦

さて、この日は最後に、前回から疑問に思っていたことを質問。
西洋ではオペラが生まれたあたりの時、言葉と音楽の関係について、
どの国でも盛んに議論されました。
言葉をメロディに載せていくときの方法論が戦わされたわけです。
(だからイタリアとフランスのオペラは全く違う発展の仕方をしたんですけどね)

狂言の場合、せりふの二音節目が高くなり、後は下がっていくという「型」は、
現代語はもちろん、狂言の基となった室町時代の日常語とも異なっていたのではないか。
そしてそれが時に言葉を理解しにくくしているのではないか。
そうしたことについての議論が、歴史上に起こらなかったのかどうかを伺ってみました。

結論は、狂言の世界ではそのような議論はおこらなかった、とのこと。
その理由は、
①もともとは神事だったから
②言葉(単語一つ一つ)の意味よりも、声の表情、ニュアンス、間といったもので、
言葉を超えて伝わるものが大きいから(問題にならなかった)とのことでした。

西洋の芸術は、まず理論ありき、と私は思っています。
日本では、理論よりも感性。感性を究極まで研ぎ澄まし、
それを頼りに芸を磨いていくものなのだなあ、と改めて納得。
もしかしたら西洋の楽人たちの間でも(世襲で器楽奏者をしていたファミリーは多い)、
実は楽譜だけに頼らず、口伝に近い形=実践を通してだけ伝えられていった
奏法もあったのかもしれない、と思うに至りました。

☆彡今日の覚えておきたい言葉☆彡

「外からの刺激(大音響・派手な照明・派手な衣装など)で呼び起こされるものは、
刺激がなくなれば消えてしまう。
しかし人それぞれの内面に呼び起こされたものは、消えることがない。
狂言とは、人の想像力によって、心の内面に起こる現象を見るもの。」
-能舞台には松の木が一本描かれているだけで、どんな場面でも背景が変化しない。
シンプルな舞台であることについての解説より。
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今日の会場 浄土宗法真寺 上の像、マリア様ではない

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こっちも、天使ではない(笑)

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三宅藤九郎先生 狂言師はお化粧をしないのだそうですが、お美し~💕



by cembalonko | 2018-08-23 21:57 | 知的好奇心 | Comments(0)

狂言講座に参加してきました!

洋楽の皆様、お耳をかっぽじってよーくお聞きあそばせ。

1.稽古は3回だけ。3回で覚える。
2.失敗は失敗のもと。稽古の時から失敗しない。
そうすれば、「失敗する」ということを覚えなくて済む。
3.稽古の時に何に向かい合い、何を受け取ったかが大事。

以上、日曜日に参加した狂言講座より。和の芸の世界は厳しいぞ。
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三宅藤九郎先生

最初から偉そうにすみません!講座、めっちゃ楽しかった!
私にとっては、何といっても1歳の時からお稽古をしている
三宅藤九郎先生の所作とお声を目の前で見れた・聴けた!この上もない贅沢~♡
猛暑の中行った甲斐がありました。

そしてお稽古体験、これがまた、楽しかったー!
実際に声を出して台詞を言う。
先生のお手本→生徒 これを3回繰り返し、3回のうちに覚える!ひゃ~(/ω\)
お稽古した台詞「このあたりのものでござる」「よいやよいや」
「びょうびょうびょう(犬の鳴き声)」が、
いまだに脳内再生を繰り返しておりまする・・・

狂言の台詞は、2音節目が上がるのが特徴。
ということは、日本語の自然な抑揚に反するときもある。
それが言葉を理解しにくくしているのでは・・・
言葉そのものを理解することに重点が置かれてなくて、
所作と声音で、観衆の想像力にゆだねるものなのだろうか・・・
これは、次回もし行けたら質問してみよう!

伝統芸能の家に生まれるということは、
それを絶やさずに継がなければならないという
プレッシャーがあることと推察します(戸籍も絶やしてはいけないそう)。
一方、その道に邁進するしかない、という行き方は、
一応芸の道を歩みつつ、それをもって生きる目標を見つけながら
細々と生きている身にとって、うらやましい、と思えるところも・・・

以上、狂言講座雑感でした!

by cembalonko | 2018-07-24 23:00 | 知的好奇心 | Comments(0)

ある侍女の回想録

ゾフィー王女様は、それは聡明な御方でした。f0018790_22353636.jpg
私はゾフィー様がお生まれになり、ツェルプストのお城にいらした時から、
お部屋係としてお仕えしておりました。
王女様の学才は、フランスからいらしたご教育係の
マドモアゼル・カルデルも舌を巻くほど。
フランス語の詩を流暢にお読みになり、
ご自身でもお作りになるほどでしたが、
王女様はどちらかというと、歴史や政治のお話の方に、
ご熱心でいらっしゃいました。
乗馬もとてもお上手で。
宮廷楽長のファッシュ様はいつも、
「ゾフィー様がもう少しクラヴィーアのお稽古に
時間を割いてくだされば、
ブリリアントな弾き手になられますものを…」と
嘆いていらっしゃいました。
でもゾフィー様、ロシアにいらしてから、
オペラの台本もお書きになっていらっしゃるのですよ。
ペテルブルクの楽長フォーミン先生が曲を付けてくださったそうです。
もっとも、このオペラがあまり人気が出なかったのは、
ゾフィー様の台本が良くなかったのだ、などと後世の人は言っているそうですが、
ゾフィー様にとっては、さぞかし心外なことでしょうね。

…ついついおしゃべりが長くなってしまいました。
私は、嬉しいのでございます。
あの、色白で華奢だったゾフィー様が、ロシアみたいな大国を束ねられるようになって、
このような見事な絵画を収集されて。
ゾフィー様の見識の高さは、ヨーロッパの列強を唸らせるのに充分なものだったと推察いたします。
ただ…この東の国での閲覧会に際しては、
私たちの故郷ツェルプストの名前がどこにも紹介されておりませんの。
「ドイツの中小領邦」なんて、ちょっと失礼ではありませんこと?

f0018790_22374311.jpgゾフィー様がロシアでエカチェリーナ2世となられてから、
さぞかしご苦労も多かったことでしょう。
娘を遠くへお嫁に出した母の気持ちは誰も同じ。
母君のヨハンナ様が半年とおかずに
お手紙をお送りになっていたお心、痛いほど分かります。
でもそれが、プロイセンからロシアと密通しようとした
スパイ活動と疑われようとは…

ツェルプスト=アンハルトはなくなってしまいましたが、
貫録のあるエカチェリーナ2世としてのお姿よりも、
ツェルプストのお城の隣の乗馬練習場で
お上手に馬を操っていたゾフィーさまのことを、
お部屋係の私はずっと覚えておりますよ。


(この記事はフィクションです。大エルミタージュ美術館展に行ってきました、のご報告でした!)
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by cembalonko | 2017-06-06 22:46 | 知的好奇心 | Comments(1)

「スメタナ《わが祖国》とミュシャ《スラヴ叙事詩》」の公開講座

今日は、加藤浩子先生の
「スメタナ《わが祖国》とミュシャ(ムハ)《スラヴ叙事詩》」の講座に行って参りました。
ミュシャ(チェコ語名ムハ)が、
ボストン交響楽団が演奏するスメタナの《わが祖国》を聴いたことが、
連作絵画《スラヴ叙事詩》の構想を後押しした経緯が分かりました。 

しかし、時代は移り、民族主義が盛り上がっていた時期に
《わが祖国》が熱狂的に受け入れられたほどには、
《スラヴ叙事詩》は人々に受け入れられず、
1963年まで人目に触れることなく田舎町に眠り、
プラハに展示されるようになったのはたった5年前とのことです。

なにせ古楽の人になってから、19世紀後半の超有名曲を改めて聴こう、
なんていうことから遠ざかっていましたが、
そんなのもったいなーい!!!と心から思った次第。
講座では一部しか聴かなかった《わが祖国》を、全部聴きたくなりました。

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ミュシャとスメタナについては、先生の最新のご著書
『音楽で楽しむ名画』(平凡社新書)にも出ています。
この文庫本サイズのご本は、音楽と絵画、または音楽家と画家の関係について、
さまざまな時代からのエピソードがまとめられており、
各単元が短いのがうれしいです。
でも、各単元ごとにカラーの絵画作品が3~4例、時には7例も掲載されていて、
単元が短い分、情報量は多いです。
夕べも一気に半分くらい読んでしまって、
寝不足でコンタクトレンズも入れられない有様に・・・(笑)

今日の私は、といいますと・・・
憧れの著者の先生と初めて直接お目にかかれて、すっかり舞い上がっておりました・・・
加藤浩子先生の『バッハへの旅』みたいな本を書きたくて、『古楽でめぐる…』が生まれたのです。
ご著書にサインいただいて目が(♡v♡)ハート♪
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by cembalonko | 2017-03-28 00:52 | 知的好奇心 | Comments(0)

つくれぽ<牛肉のワイン煮>(1745年のレシピより)

今月のメルマガでご紹介した「ライプツィヒの料理本」レシピで、実際に作ってみました!
メルマガに掲載した記事は、単純にドイツ語を訳したものでしたが、
実際に作ってみると、もしかしたら言葉の解釈が違っていたかも!?という事例を発見。
次号で訂正いたします。
皆様の中でも、作ってみられて「これは?」と思われることが
出てきた方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせくださいませ。m(__)m

つくれぽ<牛肉のワイン煮>Rindfleisch mit Wein zu kochen

1.Nimm ein Stück Ober-Schale oder Brustkern, so wohl auch Ziemen, lege es eine Nacht in Wein,
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☆今回は牛の腿肉を使い、レシピ通りちゃんと赤ワインに漬けて一晩寝かせました!
赤ワインは、今回は実験なので、とりあえず一瓶400円くらいので(笑)
いいワインを使えば、それはもっと美味しくできることでしょう・・・

2.setze es frühe mit dem Weine zu und ein wenig Wasser, laß es kochen bis es weich und fest eingekocht, thue bey Zeiten darzu Lorbeer-Blätter, gestossene Nelcken, Cardemomen, Muscatenblumen(※1), eine Citrone geschnitten in halbe Viertheil lang.
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☆スパイスの分量ですが、書いてないし~ 汗;
カルダモンとクローブは、かなり香りが強いものとの認識があり、
一方ナツメグは、現代人にも慣れた香りだと思ったので、
カルダモンとクローブを一振りずつ、ナツメグを二振りくらい(アバウト!)でやってみました。
スパイスを投入したばかりの時には、妙~な香りがして、「大丈夫か!?」と思いましたが、
だんだんなじんでくるようです。
(※1Muscatenblumenとは、実はメースのことなのですが、ナツメグで代用)

3.Wenn denn das Fleisch gut, so lege es in einen Tiegel, gieß von der Brühe(※2) darauf, so viel nöthig,
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だいぶ煮詰まってきた状態

☆煮詰まった状態の煮汁を味見してみましたら、レモンの酸っぱさがあり、
さらにレモンの皮の苦みの方を強く感じました。
「レモンの皮の分量を減らした方が良かったのかな?」と思いましたが、
お肉にソースとしてかける分量にすると、バランスの取れたお味に!
(※2 Brüheをメルマガでは「ブイヨン」と訳しましたが、
実際には煮込んだ汁のことを指していたようでした。)

4.brenne Mehl trocken fein gelbicht(※3), thue es auch zu dem Fleisch, laß es ein wenig miteinander aufkochen,
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☆小麦粉をフライパンで煎る。
(※3 fein gelbichtをメルマガでは「きつね色に煎った小麦粉」と訳しましたが、実際には言葉通り、
「きれいに黄色味がかった」で良かったのでした。つまり、煮汁にとろみがつけられればOK。)

5.richte es dann an, giesse die Brühe darüber, lege die Lorbeer-Blätter und Citronen oben auf das Fleisch, und frische Citronen mit Lorbeer-Blättern auf den Rand.
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☆「レモンとローレルを肉の上にのせ、周りを生のレモンとローレルで飾る」
って書いてあったから、その通りにしてみました。
本当は大皿盛りにするのでしょうが、とりあえず一人分で。

煮込み時間は、約2時間。
レモンの酸味と苦みが効いたソースがお肉と合います。
冷めても美味しくいただけます。
漢方薬にも使われているスパイスのお陰か、
消化が促進されるような気が・・・
あと、塩分は使っていませんが、喉が渇く感じになりました。
そのお陰で、ワインやビールがすすむのでしょうね~♪

♪ ♪ ♪ ♪ ♪

料理し終わってしばらくして、
他の部屋からキッチンとつながっている居間に入ってきたところ、
スパイスとワインとレモンの香りが熟成された、
なんとも幸せな香りが漂っていました。

18世紀前半、人々の日常生活の空間には、
中世ほどではないにしても、
普通に、ある種の「臭気」が漂っていたものと思われます。
そんな中、調理をすること(特別な機会のご馳走料理ならなおさら)によって、
その料理自体を味わう以外にも、
きっと非日常的な、幸福感が漂う空間が作り出されていたのではないかと思いました。

以上、18世紀の<牛肉のワイン煮>つくれぼでした~\(^o^)/



by cembalonko | 2017-03-24 12:31 | 知的好奇心 | Comments(0)

18世紀のドイツ料理のレシピ本

そんなことしている暇があったらやらなければならないことは山積みなのですが、
18世紀前半にライプツィヒで出版され、
5刷を重ねたという料理のレシピ本を訳しちゃったりしてます。
これが、むちゃ面白いです!
庶民の料理がエンターテイメントになりつつあるのがよくわかる。
ライプツィヒみたいな大都市など、豊かな市民層がしっかりいた所では、
こうしたレシピ本に需要があったのでしょう。

この本の魅力は、
1.使っている材料の種類の多さ(牛、鳩、蛙、鱒、蝸牛、蝦、柘榴、各種ハーブ類、などなど・・・)
2.盛り付け方が懇切丁寧に細かく指示してあるところ(ドイツ人っぽい!)
そして、3.読み物としても面白い ってところかな?
「栓を開けたはいいけど半分残っちゃったワインをどうするか」
なーんてことまで書いてあるのです。
うーん、内容ぜんぶ発表しちゃいたい気持ちはありつつも、
今回はもったいないからとっておこう!(意地悪👿)
5月28日(日)「ケーテンのバッハと宮廷音楽」のイベントのときに何かの形にするかも~~~♪♪♪
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by cembalonko | 2017-03-10 00:28 | 知的好奇心 | Comments(0)

<受胎告知>の見方 ー 完全受け売りヴァージョン!

もう2週間前のことですが、国立新美術館 「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」に行ってきました。
その日は運よく、展覧会の監修者・越川倫明教授の講演を聴くことができたのですが、
なかでも特に、これからの美術鑑賞の役に立ちそうだったのが
「受胎告知の見方」でしたので、ご紹介します。

受胎告知の主題は、新約聖書のルカによる福音書第1章第26節から第38節 に書かれている、
乙女マリアのもとに天使ガブリエルが突然現れて、神の子を身籠ることを伝える場面です。
越川先生いわく「天使が17・8歳の女の子にむかって
『あなた、もうすぐ妊娠するわよ!』と言いにくるわけです・・・」
非常に分かりやすい!イメージ沸く!(笑)

このルカによる福音書の記述の中には、
マリアの中に起こる4つの異なった感情が現れます。
1.恐れ 2.戸惑い 3.疑問 4.服従(神の御業に対しての)
「受胎告知」を鑑賞する場合には、この4つの感情のうち、
どれにフォーカスして描かれたかを見ると、
画家の意図や表現の技術が、よりよく分かる、とのことでした。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪

さて、この講演全体の内容は、
今回の展示の目玉でもあるティツィアーノ後期の作品「受胎告知」について(カタログ番号20)でした。

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講演は次の5項目にそって進められました。

1.線的様式(linear)と絵画的様式(painterly)
  ※レオナルド・ダ・ヴィンチはlinear、ティツィアーノはpainerly
2.ヴェネツィア派の技法の展開
  ※・1470年代の油絵技法の導入・下絵から自由に変更して描く・緻密な描写から荒い筆触へ
3.ティツィアーノ晩年様式の同時代人の評価
  ※ヴァザーリはじめ、おおむね批判的
   (筆触が見えるものは完成しているとみなされなかった)
4.受胎告知の主題と表現の伝統  
5.再びティツィアーノ「受胎告知」を見る

ティツィアーノの「受胎告知」には、他にも興味深いお話がありました。
この絵でマリアと天使のポーズを見ると、マリアは右手を上げ、頭にかけたベールをあげています。
一方、天使は胸の前で両腕を交差させて合わせています。

この絵から遡ること30年(?記憶が曖昧)ほど前に、
スペイン宮廷のために、彼が同じ主題で書いた絵がありました。
(原画は散逸、その絵をもとにした版画が現存)
その絵の場合、構図はほぼ同じなのですが、
天使とマリアのポーズが入れ替わっているとのことです。
天使は腕を上げて、高らかに神の御業を伝え、
マリアは胸の前で腕を合せている。
マリアが胸の前で腕を合せた場合、
これは「服従」の感情を表している、とのことです。

さて、今回展示されている「受胎告知」をX線投影したところ、
この絵も、もともとは天使は腕を上げ、
マリアは胸の前で腕を合せる、というポーズで描かれていました。
ところが、製作途中でティツィアーノはこのポーズを変更し、
マリアが腕を上げ天使が腕を組むポーズに描き直したということです。

その意図は、どこにあったのでしょうか。
恐れ・戸惑いが起こる前の「はっ」とした一瞬を描きたかったのか・・・
天使の言葉を傾聴して自身の運命を受け入れつつある瞬間を描きたかったのか・・・
越川先生いわく、「右側の書架に向かって本を読んでいたマリアが
左側に振り向いた瞬間であり、
日常から非現実の世界へといざなわれる瞬間」とのことでした。
見る人それぞれの感性をかきたてられる作品です。

この「受胎告知」に会えるのは、東京では10月10日までです。



by cembalonko | 2016-09-03 23:22 | 知的好奇心 | Comments(1)

ポンピドゥー・センター傑作展に行ってきました!

水曜日、酷暑の上野へ・・・

この展覧会は、パリにあるモダンアートの殿堂・
ポンピドゥー・センターの収蔵作品が、
1906年から1977年まで、年を追って一年に一作品ずつを
選んで展示するという方法がとられていました。(計71作品)
ピカソ、マチス、シャガールなどの巨匠の作品とともに、
そこまでビッグネームではないアーティストの作品も。
4分の3世紀の中での、フランス前衛芸術の流れを
おおまかにとらえることが出来る、
見ごたえのある展覧会。
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左からシャガール、ボッチチェリ(紛れこんだ映画『メディチ家の至宝』のチケット(笑))
カンディンスキー、ヴァザルリ、マチス、ピカソ

個人的には、上記の3人の他に、

セラフィーヌ・ルイ《楽園の樹》(1929年)
・・・正式に絵画の勉強をしていないのに、力強い造形と色彩が印象的。
幹に茂った大きな葉に水玉模様が!勝手に草間彌生と命名(笑)
ヴィクトル・ヴァザルリ《アーニー(影)》(1967年)
・・・ただ□や○の中に、隣と微妙に違う色を塗っているだけなのに、
ホログラムのように見える驚き!
ヴァシリー・カンディンスキー《30》(1937年)
・・・白と黒の市松模様に並ぶ30個の正方形の中に、象形文字のような、
記号のような不思議な造形が並ぶ。じーっと見入ってしまう作品

などが、特に印象に残りました。

私にとっては、知らない人ばかりの印象でしたが、
フランス近代美術の層の厚さを感じさせてくれる、
珠玉の作品がそろった展覧会でした。楽しかった!

★★★今日の奇跡★★★
展示作品の絵ハガキを5枚買った人は一枚、
くじを引いて一枚シールをもらえることになっていました。
絵ハガキコーナーに草間彌生セラフィーヌ・ルイがなく、残念に思っていたのですが、
くじの箱に手を入れて引き当てた、その一枚は・・・・・・
私が欲しかった草間彌生セラフィーヌ!キター!!!
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水玉はあまりよく見えないけど

展覧会については、こちらのプログに詳しく出ています。
公式サイトはこちら

by cembalonko | 2016-08-12 22:52 | 知的好奇心 | Comments(1)